未来の世代の子供たちの行く末は、今の教師にかかっています。残念なことに、今の教師は、仕事に見合った十分な給料が支払われていないと言われています。全米教育協会によると、アメリカの教師の平均年収は、450万円程度で、それを下回る州もいくつかあるようです。
エリザベス・ミレッチさんのような教師は、自分のクラスの教材費や、その家族の生活費も援助しないといけませんでした。ミレッチさんが、フェイスブックに自分の給料を公開したことで、全米から注目を集め、なんと思いも寄らない結果になったのです・・・
すべてを自分でやっていた教師
2018年に、2年生を担任に持つ教師が、ソーシャルメディアで、全国的に注目され始めたのです。エリザベス・ミレッチさんは、アリゾナ州のフェニックスにあるウイスパリング・ウインド・アカデミーで、7年間教師を務めてきました。ミレッチさんは、43歳で、3人の生徒と、自分の子供たちを教えていました。
タイトル1指定の学校ではあったものの、ウイスパリング・ウインドには、低所得収入者の子供が多く、教育を充実させるために国からの支援も受けたいましたが、ミレッチさんは、その支援基金の不十分さに不満を抱いていたのです。
学べる環境を整えるために尽力を尽くす
ミレッチさんのクラスに入るとすぐに誰でも、カラフルで、飾りのされた学ぶのが楽しくなるような環境であると気づくはずです。ミレッチさんは、いつも自分のクラスと生徒たちのことを考え、努力を惜しまない教師でした。ただ、親御さんたちも知らなかったのですが、ミレッチさんは、自分のお金を費やしてクラスを良くしていたのです。
ウイスパリング・ウインドには十分な基金がなかったため、ミレッチさんは、自費でクラスに必要な教材などを購入していたのです。それは、ノートだったり、ペイント、マーカー、スナック、されにごみ箱なども、すべてミレッチさんの財布からでたお金で賄われていたのです。
ミレッチさんの努力にも限界が
ウイスパリング・ウインドは、備品が支給されていないだけでなく、ミレッチさんのクラスには、クローゼットもないのです。そのため、多くの備品は、自分の家に保管していて、必要な時だけ持って来なければならないのです。
ミレッチさんによると、自分のクラスのごみ箱もウオールマートで購入して、その時に、ショッピングカートを押しながら、"自分のお金で自分のクラスのごみ箱を買うなんて、教師ぐらいよ!"って笑い飛ばしていたそうです。
ミレッチさんも、ひとりですべて払えるわけはないのです
お察しの通り、ミレッチさんも支援金のない中で、どうにも行かなくなり始めたのです。教師と言う職業自体、給料も良くなく、必要な備品のすべてを自分で賄うことができなくなったのです。旦那さんの給料無しでは、自分の子供たちの世話もできなかったと語っています。
グッドモーニングアメリカで、"自分の家や、自分の子供たち、それとも援助の必要な学校の子供たちにお金を使うか、決めるのにとても苦労したわ"とコメントしています。
苦労していた教師は、ミレッチさんだけではありません
残念なことに、ミレッチさんのように金銭的に苦労している教師はたくさんいたのです。全米教育協会によると、アリゾナの教師は、他の米国の教師に比べても、平均年収が110万円ほど少なかったのです。前年度の集計によると、アリゾナは全米でも45番目に教師の平均年収が低い州なのです。
全米教育統計センターによると、全米の教師は、毎年約5万円ほどを自費でまかなっていて、アリゾナに住む教師が、他の州へと働きに行くことも納得がいくのです。でも、ミレッチさんは、違う場所へ働きに行くことをせずに、状況を改善する努力をしたのです。
ちょうどその時:Red for ED運動が
2018年の3月には、アリゾナの教師たちが、自分たちの不満を公共のもとへ晒したのです。何百人もの教師が、賃金の値上げを訴えるため、チャンドラーの教育委員会で、デモを行ったのです。
少なくとも2500人もの教育関連の人々や、サポーターたちが、賃金の20%値上げを訴えて、州議会議事堂へ押しかけました。ストライキは、政治家たちが、教育基金のための500億円増加の法律を通過させるまで行われました。この行動は、ミレッチさんの運動にも大きく影響したのです。
ミレッチさんも昇給しましたが、それって十分なの?
ミレッチさんも1万5千円ほどの昇給を受けましたが、それで十分なんでしょうか?Red for ED運動と、ミレッチさんの基金も底をつき始めたこともあり、彼女に火を付けたのです。"こんな昇給なんて、ほとんど意味ないわ。もともと全然稼いでないのに、自分で自分のクラスルームをメンテナンスしないといけないんだから"
ミレッチさんは、十分考えたあげく、ある行動をとったのです。フェイスブックを通して、皆の目を引くある行動をとりました。
これで皆が納得
2018年の3月8日に、ミレッチさんは、自分の給料明細をフェイスブックにあげる決断をしました。彼女の年収は、たったの410万円程度だったのです。もっとわかりやすく言うと、ミレッチさんの給料を時給に換算すると、時給2000円なのです。これは普通のレストランのウエイターとほとんど変わらない額です。しかも、これは昇給後の金額なのです。
"自分の給料明細を上げるかどうか、本当に悩んだの。でも、これでアリゾナの教師がどれだけ少ない給料で働いているかを、みんなに知って欲しかったの。でも、昇給後と前の給料を比較してみて、自分でも笑ってしまったわ"と、コメントしています。
真実を暴露
更に、"私は大学進学で、920万円ほど払って、アリゾナに教員免許を移すのに5万円ほど払ったわ。今も自分の使うテープやペーパークリップ、採点に必要なマーカーなんかも全部自分で払ってるの。もちろんこれだけじゃないわ。まだまだあるわ。"
“私は、お金のために教師をしているわけじゃないけど、自分の家族を養うために、もう少し給料が必要なの。私の同じ教師友達は、シングルマザーで、すべてをやりくりするために、3つもの仕事を掛け持ちしているの”とコメントを残しています。
想像もしていない状況が
ミレッチさんの投稿から5日までに、1000以上もシェアがあり、コメントも読み切れないほど投稿されたのです。地元のメディアもミレッチさんのストーリーに興味を持ち、多くの人が、それだけ教師の給料が少ないか驚きを隠せなかったのです。
ミレッチさんは、"ずっと不満だったの。でも、私の投稿がこんな衝撃をうむなんて考えもしてなかったわ。こんなに話題になるなんて。"と、ピープルでコメントしています。結果的に、ミレッチさんのストーリーは、どんどん広まっていったのです。
それでも、すべてが良いことばかりでななかった
ミレッチさんのもとには、多くの賛同のコメントが届き、激励のメッセージや、給料に対する怒りの声が多く上がりました。それでも、中には、中傷する人もいて、ミレッチさんを非難したり、嘘つき呼ばわりする人もいたのです。
そのこともあり、ミレッチさんも心が折れて、投稿を消してしまいました。それでも彼女の投稿は更なる波紋を呼んでいました。全国放送の局が、ミレッチさんの話をフォーカスしたのです。そんな中、ミレッチさんは、そのことも忘れ、普段の生活を送っていました。
それでも、ミレッチさんに必要だったのは、ひとりだけ。
3000キロ以上も離れたニューヨークに住むベン・アダムスと言う男性が、ビル・メイハーがホストのリアル・タイムスで、ミレッチさんのストーリーを紹介しているのを見ていました。ベンさんも同様に、ミレッチさんの苦労にとても共感したのですが、ただ違うところは、ベンさんは、ある行動を起こしたことです。
アダムスさんは、"僕も3人子供がいて、仕事をしているけど、年収410万円程度で、家族も養って、クラスの備品も自分で賄っているなんて、とてもじゃないけど信じられないよ。"と、コメントしています。アダムさんは、ミレッチさんの状況に共感し、手を貸すことを決めたのです。
ひとつのコメントでミレッチさんの状況が一変
アダムさんは、不動産業を営み、副業で、フリーランスのジャーナリストもしていました。アダムさんは、この状況がとても重要な状況だと考え、"テレビや、ソーシャルメディア、ユーチューブなどで、ミレッチさんのストーリを聞いた人達の中にも、手助けをしたい人がいるはずです。"と、後に答えています。
アダムさんは、ミレッチさんをフェイスブックで見つけて、“あなたのクラスの備品を提供してくれるような人は出てきましたか?”と、コメントを送ったのです。
見知らぬ人からの手助け
ミレッチさんの投稿から数か月がたち、彼女もそのことをすっかり忘れていました。そんな時、アダムさんからのメッセージを見て思い出したのです。それでも、ミレッチさんは、どうしていいかわからず、ただ、"いいえ"と答えただけでした。すぐに、アダムさんは、“だったら、僕があなたのクラスのために備品を購入させていただきたいのですが”と答えたのです。
“とても普通だと思えなかったの。だって、この男性は、ニューヨークに住んでいて、全くの他人なんですもの。”と、ミレッチさんは答えています。
ちょっと信じるには出来すぎてない?
ミレッチさんは、アダムさんのことを知らないし、これもきっと詐欺に違いないと思ったのです。アダムさんは、更にミレッチさんに、アマゾンでウイッシュリストを作成して、クラスに必要なものをすべて書き込んでくれるように頼んだのです。
ミレッチさんも、ウイッシュリスト作成だけだったら、何の悪影響もないはずと思ったのです。たとえ、これが詐欺だったとしても、このリストは自分でも後で活用できると考え、リストを作成して、また普段の生活に戻ったのです。
信じられないことが起こったのです
数日してから、ミレッチさんは、自分のクラスルームにものが置かれていることに気が付きました。先日作ったリストの品が、郵便で届いていたのです。アダムさんは、ウイスパリング・ウインドに、そのすべての備品を送っていたのです。もちろん、ミレッチさんは、一円も使っていません。
"私の人生を全く変えてくれたの。とても謙虚で、とても親切なことだと思います。ひとの親切を改めて私に思い知らせれくれました。本当に親切な人は、見返りなんて望まないものなんですよね。"と、ミレッチさんは、後に答えています。
しかも、これは一度だけではなかった
"これは、一度きりのことだと思っていたわ。"と、ミレッチさんは、後に言っています。ミレッチさんも、この親切のおかげで、そのセメスターも無事に終了することができ、次のセメスターの備品を買う準備に取り掛かっていました。
2018年の12月に、アダムさんは、またミレッチさんに連絡を取ったのです。アダムさんは、次のセメスターに必要な備品のリストを聞いてきたのです。前回と同様に、アマゾンのパッケージが学校に届いたのです。それから、何度も、何度も続きました。
届いた備品で、クラスにもいい影響が
アダムさんの親切で喜んだのは、ミレッチさんだけではありません。生徒たちもとても感謝しているのです。"アダムさんのことを、ニューヨークにいるあしながおじさん、と呼んでいるの。生徒たちも、とても喜んでいて、荷物が届くたびに、みんな、中のものを見るのをワクワクしていたの。"と、インタビューで語っています。
“アダムさんは、世界で一番親切な人に違いないわ。彼は、ぼくらウイスパリング・ウインド・アカデミーのヒーローだよ。“と、生徒のひとりがインタビューでコメントしています。
ドネーションの輪が広がる
アダムさんは、ミレッチさんのクラスに備品を提供し続けました。アダムさんによると、ドネーションには中毒性があって、もっとしたいと思うようになるそうです。"僕は、特に不都合な状況にいる人が、何も言わないで頑張っているのを見ると、どうしても手助けしたくなるんです。先生たちは、一生懸命働いているにも関わらず、その見返りは少ないんです"と、グッド・モーニングアメリカで答えています。
時がたち、ミレッチさんの同僚たちも、ミレッチさんが無料で学校の備品を受けていることを知り、アダムさんの親切がずっと続くことも確信していました。
アダムさんの親切は終わらない
最終的には、アダムさんは、ウイスパリング・ウインド・アカデミーの他の先生たちにもドーネーションを申し出て、必要な備品を送ることにしたのです。ミレッチさんも、先生の中には、自分よりもきつい状況にいる先生がいることを知っていたので、その申し出をすぐに他の先生にも伝えたのです。
その申し出により、他の5人の先生たちもアマゾンでウイッシュリストを作成し、アダムさんに送りました。その後、ウイスパリング・ウインド・アカデミーの生徒たちは、スナックやペイント、マーカー、色付きのペーパー、標識や、他にもいろいろなものが詰まったパッケージが送られてきました。
ひとりの教師がもたらしたもの
アダムさんは、ウイスパリング・ウインド・アカデミーの6人の教師たちに備品を送ったのですが、アダムさんは、このプロジェクトをもっと大きくしたのです。2019年に、ウエブ上で、クラスルーム・ギビングを発足させました。このサイトでは、アマゾンのウイッシュリストに行って、アリゾナの教師たちへの備品を購入してあげることができるのです。
"僕たちは、ドネーションや募金を呼び掛けてるんじゃないんですよ。ただ、あなたが買える程度のものを送っていただければと考えているんです。あなたが購入した備品は、その人に届くんですよ。"と、アダムさんは、答えています。
全米へ波及
2019年の4月に、アダムさんは、クラスルーム・ギビング・ドッド・オーグを立ち上げ、想像以上の結果をもたらしました。数か月後には、参加者のおかげで、37人もの教師たちのすべての備品が賄われたのです。そのすぐ後に、アダムさんは、カルフォルニア、ワシントン、アラスカ、そしてコロラドの教師たちからも要望を受け、ウエブ上でウイッシュリストが付け足されました。
アダムさんのウェブは、教師たちへのチャリティーとなり、"これは、結婚式のレジストリー的なもので、シークレットサンタみたいなものなんですよ。強制するものじゃないんですよ。"と、述べています。結果的に、ミレッチさんのストーリーに共感した人たちが、手助けとなったのです。
すべては、ひとりの教師から始まった
フェイスブックからの一つの投稿で、親切なオファーが生まれ、それがコミュニティーレベルへと拡散していきました。クラスルーム・ギビング・ドッド・オーグは、現在48州1500ものクラスが参加しています。今も、贈り物や募金は受け付けていません。
クラスへの備品提供者たちには、生徒から心のこもった手書きのサインや手紙などが送られてきます。アダムさんも、ウイスパリング・ウインド・アカデミーから多くの感謝の手紙をもらっています。
今もなお広がっているのです
現在、アダムさんは、地元でその活動も行っていて、学校を支援することで、自分の会社が地元のコミュニティーとも繋がると考えています。付き合いが長ければ長いほど、良いことなのです。
アダムさんは、アリゾナにもビジネスや組織を広げていて、今の全米での活動にも関わらず、今でもエリザベス・ミレッチさんとも交流を図っているのです。ミレッチさんの正真正銘の正直な投稿がきっかけで、現在の大きな動きへと変わったことに、アダムさんは、とても感謝しているのです。
そのつながりが、すべての始まり
この活動を通してもなお、アダムさんは、ミレッチさんのクラスに備品を提供しています。二人は、まだ実際に出会ったことはありませんが、二人はとてもいい友情関係を続けています。ミレッチさんは、この関係を素晴らしいパートナーシップと呼んでいるのです。
ミレッチさんは、いつアダムさんと会うかはわかりませんが、出会ったときに、どう挨拶するか決めているのです。"出会ったら、とにかく大きなハグをするの。アダムさんが、ハグが好きか嫌いかわからないけど、とにかく私はハグするの。それで、彼のおかげで、私と生徒たちがどれだけ幸福になれたかを、アダムさんに知ってもらうの"と、語っています。