だんだんと暖かくなってくると厄介なのが虫です。そんな虫の中でも、蚊は特に嫌われ者です。皮膚が痒くなるなるだけでなく、病気もばらまく、世界中で空飛ぶ脅威として名を知らしめています。
ある研究者のチームは、蚊による病気の拡大防止を目的とし、病気を媒介する蚊を研究するためにアフリカへと向かったのです。そこで分かった理由が蚊が人の血を吸いたくなる理由がまさかだった!
夏の街
さぁ街に夏がやってきました。みんな夜空の下でキャンプファイヤーをしたり、夕焼けを見ながらビーチに佇んだり、夜の散歩に繰り出すなど、夏の長い日を楽しみにしています。
でも、あなたと同じように温かい日々を楽しみしている生き物もいるのです。
避けられない痒み
キャンプファイヤーや、夜の散歩から帰ってきたら、なんだか痒くなっていることがよくありますよね。
自分の肌を見てみたら、腕や足中に小さなピンク色の斑点があちこちにできていて、とても痒いのです。そんなすさまじい痒みの中で、あなたはようやく蚊に刺されてことに気が付くのです。
蚊に出くわす
夏の日差しが強くなると、気味の悪い奴らが、ここぞとばかりにやってくるのです。アリや蜂、蜘蛛の中でも、蚊が一番厄介なのです。
実際の所、世界中には、3千種類もの蚊が生息していますが、ヒトを好んで噛み、病気を媒介するのは、ほんの数種類だけなのです。しかしながら、そうはいったものの、この小さな生き物がもたらす被害は甚大なものなのです。
世界の中でもかなり厄介な生き物
危険な生き物と言うと、多くの人は、サメやワニといった肉食獣などの猛獣を思い浮かべますが、そういった生き物だけが、そうだと思っているなら、それは間違いですよ。
この世界で最も危険な生き物は、蚊なのです。蚊による被害は甚大で、毎年約一億人もの人が病気になっているのです。
オスとメスの違い
オスの蚊は、実際の所、無害で花の蜜を吸っています。そもそも人間を噛まないので、病気を媒介することもありません。残念ながら、それはメスも同じと言うわけにはいかないのです。
皆さんの知っている人を噛む蚊は、そのすべてがメスで、血を吸う目的は、卵を産んで繁殖するためなのです。蚊が人の血を吸うときに、皮膚を突き刺して、血を吸い、その際に唾液を注入するのです。
ハマダラカ
研究者やヘルスケア従事者によると、ハマダラカは、蚊の亜種の一つで、ハマダラカ
と、もう一つの亜種は、かなり危険な蚊であると言われています。
アフリカ大陸に広がる、あるウイルス性疾患であるマラリアは、このたった一匹の蚊で引き起こされているのです。この亜熱帯種は、インド、中近東、南アジアの一部にも生息しています。
ネッタイシマカ
ネッタイシマカは、別名"黄色熱蚊"とも呼ばれ、体に白色の模様があるのが特徴です。この種の蚊は、ジカ熱やデング熱を引き起こすウイルスを媒介し、熱帯雨林、亜熱帯地域や、アフリカやアジアなどの温暖地域、またアメリカの一部にも生息しています。
この蚊の研究は、かなりの功績をあげて、この研究で、蚊がどうして他の動物より、人間を好むのかを決定づける証拠を残しました。特に、この研究により、その拡散防止の方法も突き止めることができたのです。
マラリアとデング熱
蚊に関して言えば、マラリアとデング熱は、ウイルスと関連のある病気です。これらの蚊は、都市部に生息しているため、病気を拡散することが多々あります。
マラリアは、蚊によって媒介する寄生虫が原因の病気で、特に酷いインフルエンザに似た症状を引き起こします。デング熱もマラリア同様に、酷いインフルエンザに似た症状を引き起こすのですが、それが酷くなると、血管系に悪影響を及ぼします。マラリアもデング熱も、致死率の高い感染症で、2018年に出された疾病対策予防センターの報告によると、世界中で、2億2800件のマラリア感染報告があり、40万5千人が死亡しているそうです。
研究
病気を媒介する蚊の危険性を理解することが重要であると考えた研究者たちは、"世界的に見ても侵襲性の高い蚊の亜種科のネッタイシマカ"の徹底的な研究を始めたのです。
科学雑誌のCurrent Biologyに発表された論文によると、“どうしてこの蚊が、いつも人間と生活を共にしている家畜動物よりも、人間を好むのかを理解することが必要である”と述べています。
これまでわかったこと
これまでの研究結果によると、"血を求めている蚊のメスの約95%が、自然と人間を好むこと"、がわかっていて、亜種科のネッタイシマカは、約5千から1万年前にアフリカで進化したと考えられています。
この蚊と、保有する病気を理解し始めたにも関わらず、“この蚊が人間を好む習性を引き起こす原因を突き止める研究はなされていない”ことも言及していました。
研究はどのようにして行われたのか
研究者たちは、サハラ砂漠近郊のネッタイシマカのコロニーを徹底的に調べ、27か所に点在したトラップから、蚊の卵を捕獲しました。
選定された場所は、ヒトと蚊が接触することがほぼ断絶された野生の木の上などの非都市部から、人口密度の高い都市部までありました。研究に使用されたサンプルは、熱帯雨林から、乾燥地帯など、様々な生態系から回収されました。
その結果から得られたものは?
研究結果によると、全体として、蚊は、基本的に体臭でホストを選ぶことが分かったのです。特に、ネッタイシマカは、"人間の体臭を強く好む習性がある"こともわかったのです。
研究された多くの蚊は、動物の血を吸うこともわかりましたが、人間を好む習性は、研究された場所で、大きく異なりました。
人口
しかしながら、研究者の見解では、人間を好む習性は二つの要因で説明できるようで、特に、"人口密度に影響"されているそうです。
研究結果によると、人間を強く好む習性は、回収された場所から半径20から50キロ内に住む人間の数に影響されているようです。これは、ガーナとガボンにあるブルキナファソにある都市から回収された蚊が、基本的に人間の体臭を好む習性がわかり、同国でも人口密度の低い場所では、その習性が低いことにも説明が付くのです。
気候と降雨量が重要
二つ目の重要な要因は、惑星の血ともいえる、水です。
ネッタイシマカは、水の流れている湿った場所にある木の穴や人工的な容器などに卵を産み落とします。その場所が湿っていれば、卵はすぐに羽化しますが、卵が、雨期の終わりごろに産み落とされた場合、乾季を乗り越えて、次の雨期までやり過ごすのです。"人工的に作られた貯蓄水などにより、一年を通してネッタイシマカの産卵は促され、幼生の発達の手助けとなります。
遺伝子解析
研究者によると、蚊の人を好む習性は、遺伝的な要因があると考え、遺伝子解析も行われました。375匹の蚊の遺伝子の塩基配列を解析した結果、染色体の領域に人間を好み、人間の血を欲するカギとなる部分が存在することがわかったのです。
実際、"人間を好む習性は、アフリカの内外で、単一遺伝子基盤として存在していた"のです。
結論
人口密度、配置具合、天候、そして遺伝子配列などの研究により、"長い乾燥期間が、ネッタイシマカの人間への執着性を特別化し、人工的な貯蓄水による繁殖の促進が、人間への依存性を高めた"と、考えられます。
しかしながら、この研究の最後に、研究者たちは、警告も発しています。
未来への対応
研究者によると、天候と人口密度の両方とも、アフリカで急激に加速されていて、その結果、急激な都市化を引き起こし、人口密度が更に増しているのです。
研究者は、更なる人口密度の促進と、天候の変化による温度の高い乾燥した環境とが相まって、"2050年までに、多くの都市部で人間を好む習性を持った蚊への進化が引き起こされる可能性"があると危惧しています。
最終勧告
これらの予想と、ネッタイシマカがもたらす影響を考慮して、科学的根拠に基づいた最終勧告が出されました。
"こういった環境的な構造変異を疫学的モデルへ取り込み、他の要因なども考慮に入れて、アフリカでのネッタイシマカを媒介した病気の伝搬をコントロールすることが急務である"と報告しています。
蚊を寄せ付けないように
蚊に刺されないようにするために自分でもできるいくつかの方法があります。
疾病対策予防センターによると、DEETなどの有効成分を含んだ防虫剤を使用することを勧めています。また、蚊が活発な時間に外にいる場合は、長袖やパンツなどを着用し、更に、ドアや窓には網戸などを取り付けて、蚊の侵入を防ぐことが肝要です。外には、水をためている容器などには、水を捨てて、蚊が卵を産み落とすことを防ぐことも必要となります。
蚊の治療方法
疾病対策予防センターによると、蚊に刺されてしまった場合に、その治療方法も紹介されています。
まず、刺された患部を石鹸で洗浄し、アイスパックで10分ほど冷やしてください。また、ベーキングソーダを水で混ぜたものを患部に当てることで、かゆみや、腫れを和らげることもでき、薬局で売っているクリームなども使用してください。最後に、感染を引き起こす可能性があるので、患部を引っ搔かないようにしましょう。